大判例

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札幌地方裁判所 昭和24年(行)24号 判決

原告 山形良一

被告 北海道庁石狩支庁長

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の趣旨

原告訴訟代理人は「被告が昭和二十四年二月九日原告に対してなした別紙目録記載の不動産に対する不動産取得税賦課処分を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めた。

三、事  実

原告の父亡山形卯三郎は別紙目録記載の不動産を所有しておつたが昭和二十三年六月十日その三男である原告にこれを贈與し即日原因を賣買名義とする所有権移轉登記手続を了したところ、同人はその約二月後の同年八月三十日死亡して相続が開始し、原告等が同人の遺産を相続した。ところが被告は原告の右不動産の取得は賣買によるものであるとしてこれに対し不動産取得税十七万四千円を賦課し、その徴税傳令書は翌二十四年二月九日原告に交付され、原告は同年三月六日被告に対して異議の申立をしたが、同月十九日却下された。しかし右不動産は相続開始の二年以内に被相続人たる右卯三郎が原告に贈與したものであるから相続税法第四條第一項第一号により相続財産とみなされ相続税賦課の対象となるものであり、原告も右不動産を相続財産中に含めて同法による申告をしたのである。一方地方税法においては相続による取得に対しては不動産取得税を課すことはできない旨規定されており、右不動産は相続税法により相続財産とみなされ結局原告が相続により取得したものとみなされるべきであるからこれに対し、不動産取得税を賦課することはできないものであつて、被告の本件不動産取得税賦課処分は違法である。それでその取消を求めるため本訴に及んだ次第であると陳述した。(立証省略)

被告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、答弁として、原告の主張事実中、原告が山形卯三郎の三男であり、右卯三郎が昭和二十三年八月三十日死亡し相続が開始したこと、原告主張の日時に右卯三郎の所有していた本件不動産につき賣買を原因とする所有権移轉登記手続がなされたこと、被告が原告において賣買により右所有権を取得したものであるとして、これに対し不動産取得税十七万四千円を賦課し、その徴税傳令書が昭和二十四年二月九日原告に交付せられたこと、原告がこれに対し同年三月六日被告に異議の申立をしたが同月十九日却下せられたことは認めるけれども、原告の本件不動産取得の原因が贈與であることは否認する。その余の事実は知らない。しこうして原告は父卯三郎との賣買により右不動産を取得したものであるから被告がこれに対し不動産取得税を課したのは正当である。なお仮に被告が贈與により本件不動産を取得したものであつて相続税法第四條第一項第一号により相続財産とみなされるとしても地方税法は不動産取得の賦課についてその不動産取得が贈與によるか賣買によるかによつて区別を設けていないし、また地方税法第十三條第二十号は相続による不動産の取得に対しては地方税を課さない旨を定めてはいるが、右相続税法の規定によつて相続財産とみなされる財産はこれに該当しないから、本件不動産取得税賦課処分は適法であると述べた。(立証省略)

四、理  由

原告の父亡山形卯三郎が別紙目録記載の不動産を所有しておつたこと、右不動産について昭和二十三年六月十日付で同人の三男である原告に対し、賣買を原因とする所有権移轉登記がなされたこと、その後二年以内である同年八月三十日に右卯三郎が死亡し相続が開始し、原告その他の者が同人の遺産を相続したこと、被告が原告は賣買によつて右不動産の所有権を取得したものであるとして、これに対して不動産取得税十七万四千円を賦課し、その徴税傳令書が昭和二十四年二月九日原告に交付されたこと、原告がこれに対し同年三月六日被告に異議の申立をし、同月十九日却下されたことは当事者間に爭がない。次に原告は本件不動産を父卯三郎からの贈與によつて取得したと主張し被告は原告の右不動産取得は賣買を原因とするものであると主張してこれを爭つているが、証人新田菊次の証言によれば、右卯三郎は右不動産を原告に贈與したが、ただその所有権移轉登記手続をするにあたつて、所有権移轉の原因が賣買であると仮想したにすぎないことが認められる。しこうして右の事実によれば、本件不動産は相続税法第四條第一項第一号によつて本件相続についての相続財産とみなされることは明白である。

さて本件における主要な爭点は右相続税法によつて相続財産とみなされる不動産が地方税法第十三條第二十号にいう「相続に因り」取得された不動産に該当するか否かであるのでこの点について判断する。

まず相続税法第四條第一項において同項第一号の相続開始前二年以内に被相続人が贈與した財産を「相続財産とみなす」と規定しているのは、單にかかる財産を相続税賦課の対象とするというだけであつて、進んで同法以外の他の法令の適用に際してもかかる財産の取得を相続によるものとみなす趣旨であるとは解し難い。他方、地方税法第十三條第二十号の「相続」とは、同法に別段の規定のない以上、民法第八百八十二條の相続のみをさすものと解釈するのが相当であり、右の「相続」中に相続税法により相続財産とみなされる場合も含むと解する根拠はないのである。

もつとも地方税法において「相続に因る」不動産の取得を地方税賦課の対象から除外しているのが、相続に因る不動産の取得によつてその取得者は一方では相続税を課せられ、他方では不動産取得税を課せられ、その結果同一原因に対して二重課税をうける結果となるためであるとするならば、たとえ贈與による不動産の取得であつても、その不動産が相続税法により相続財産とみなされ、相続税賦課の対象となる場合には、地方税法第十三條第二十号の相続に因る取得に含まれるとする解釈もあながち不当ではないのであろう。しかしかかる解釈は相続税は相続によつて相続人の財産が増加することを原因とし、不動産取得税は不動産の取得それ自体を原因としてそれぞれ賦課され、各々の賦課の原因は別個のものであつて、相続による不動産の取得があつても、相続財産の價格の如何によつては相続税が賦課されない場合もありうること、あるいは贈與された不動産が相続税法の相続財産とみなされない場合でも、贈與者に対して相続税の一変形物である贈與税が賦課せられることなどからみると、成りたちえないことは明白である。

以上述べた見解に立つと、本件不動産が相続税法により相続財産とみなされることは、原告が右不動産を取得したことを原因として不動産取得税を賦課することの妨げとはならないのであつて、また地方税法は不動産の取得が贈與によると賣買によるとよつて差異を設けてはいないから被告が本件不動産の取得を賣買とみたとしても、これは課税処分のかしとはならない。從つて原告が本件不動産取得税賦課処分の違法である理由として主張するところは採用できず、右課税処分の違法であることを原因とする原告の本訴請求は失当として棄却せざるをえない。よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九條を適用して主文のとおり判決した。

(裁判官 斎藤敏之 矢吹幸太郎 横山茂晴)

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